...小説


流れに願いをかけ、


 今日は何とか流星群が見られる日らしい。
 ニュースのおねえさんが楽しそうに言っている。
「ねぇねぇ、流れ星だって。見に行かない?」
 私の部屋のソファで寝転がってケータイをいじっている彼に話しかけた。
「・・・・・・行かねぇ」
 目だけを私に向けて言うが、彼の視線はすぐにケータイ画面に戻った。

 この人とはつき合ってもう長い。
 私たちの関係は今ではマンネリ化して、ろくに話すこともない。
 少しでもこの居心地の悪い関係を良くしようとした私の提案にもこの人は乗ってくれない。

 流星群のよく見えるという河川敷には私一人で行くことにした。
 行ってみると、まだ夕方だというのに人が沢山いた。
 友達と敷物に寝そべり布団を掛けて流れ星を待つ人や、恋人同士で楽しそうに待つ人、子供と一緒に来ている人なんかもいた。

 なんだ私だけ一人か。

 河川敷を降りる石段の上の方に座って星を待っていた。
 流れ星にする願い事は、ここに来る途中で考えていた。

 あの男とまた楽しく話せますように。

 どんなに気まずい関係になったって好きな気持は変わらない。
 向こうはどう思っているのか知らないが。
 いい歳して流れ星に願い事なんて子供くさいとは思いながらも、もしかしたらという希望を託すことにした。

 空が暗くなりはじめた。
 星もぱらぱらと見えてくる。
 ずっと上を見上げていたせいで首が少し痛くなってきたので、首をぐるぐると回す。
 空を見ることに飽きてぼうっと下にいる人たちを眺めていたら、歓声が聞こえた。
 急いで夜空を見上げると、私も流れ星を見た。
 うっすらと黒い空に白く細長い線がすーっと引かれ、あっという間に消えてしまった。

 それから間もなく、ふたが開いたように流れ星は次々とやって来た。
 まだ完全に黒くなっていない空にはもったいない光景だった。
 しかしすぐに空は真っ暗になった。
 そして星は途切れることなく流れ続ける。
 普段は動くことのない星達が次々と流れていく光景は、綺麗だったが壮絶だった。

 いつしか私は、もっと見ていたい、と願っていた。


(おわり)

2006/1/7




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