...小説


金魚


 ごめんとひとこと言ってキンは湖に水を放った。一緒に入っていた金魚が流れていった。
 そしてキンは、後ろを振り向くことなく森を出ていった。

 数日して、キンはよく眠るようになった。
 キンの見る夢は、水が赤く染まる夢。小さな点がにじみながら肥大していき、水は赤く染まる。
 うなされて目覚めたキンは、怖くて泣いた。その時、涙も赤いと錯覚した。

 赤く染まった水は、水の大きさに合わせて肥大した金魚のようで。

 とある釣り人の話が流行った。
 湖が赤く染まって見える。
 確かめた人も帰ってきてそう話した。キンは怖くて泣いた。
 そして確かめに行ったキンの父は帰ってこなかった。迎えに行った母も兄も帰ってこなかった。

 ひとりになったキンは湖に行った。
 辿り着くと多くの人がいた。人の隙間から覗いた湖は、赤く染まっている。そして赤は動いている。

 湖の大きさに合わせて肥大した金魚だ。
 泳ぐ隙間が無いくらいに巨大化した金魚を見つめて、キンは湖に入っていった。
 人が止めるよりも早く、金魚がキンを乗せて底へ沈んでいく。湖は赤から黒に変わっていった。

 数分すると、湖の中央にキンとその家族が浮かんだ。
 引き上げられたキンたちに異常はない。
 それから湖が赤く染まることはなく、人々はそのことを夢にした。

 キンの家族が家に帰って、金魚を思いながら涙を流すと、全員の目から金色の水が出た。
 その水が高く売れると、キンは再びごめんと言って、ありがとうと言った。


(おわり)

2008/5/10


金魚だからキンとか・・・笑




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