寒くなってきた、秋の終わりごろ。
夏の終わりごろだっただろうか、秋の初めごろだっただろうか、私のへやに異質者が存在するようになった。
異質者というより異種者、へやというより窓と網戸の間。
こいつは窓と網戸の間から出られない、一匹のハエだ。
ハエがそこに住み初めて1ヶ月くらいたっても、ハエはそこから出られていない。
出られる穴を探してぐるぐるまわっている。
一度、誘導させて網戸の外へ出そうとしたことがある。
だけど、網戸をたたいて誘導しても、ハエは変な方にしか行かなかった。
バカだな、と私は諦めた。
窓ガラスを通して日光が入り、へやの中に日向ができる。その窓の形をした日向の一部に影の点がある。
ハエが動くたびに同じように動く影。
まるでへやの中にハエがいるようで、少し気持ちが悪い。
でもハエも、影も、一定の範囲内でしか動けない。
(終)
ある日、出かける前にクモの巣を見つけた。
しかもそれは未完成だった。
主はどこだろうと思って、ちょっと探せば、今まさにそのクモの巣を作っているところだった。
放射状に糸をはり、それに合わせて渦巻きを描くように中心から糸を貼りつけていった。
なかなか巧みなもので、一周すると、前回一周してつけた糸に右足を置いて、それを伝ってまた時計回りに一周する。
そうすることで渦巻きの隙間が見事一定になるのだ。
はじめて見るクモの巣の作成現場に、私は感動した。
じっと作っている様子を見つめていると、母が横に立った。
クモがクモの巣を作っていると説明すると、母も感動していた。
「こんな風にしてクモの巣って出来てるんだね」
クモの生き物らしい姿を見て、クモとクモの巣が少し好きになった。
(終)
もう、なん匹叩き潰しただろう。
今年の夏は私のもとにたくさんの蚊がやってきた。
あの蚊の独特の飛ぶ音はとても耳障りだ。
電気を消すと、感覚がより鋭くなって眠れない。
蚊がいなくても幻聴になって聞こえてしまうほど気になっていた。
睡眠不足の恨みもあって、蚊をみつけると容赦なく下敷きで叩いた。
蚊を叩き潰したら、3ヵ所に合掌をした。
潰した壁、潰した下敷き、そしてティッシュに包んだごみ箱の中の死骸。
生まれ変わったら良い人間になりますように、と唱える。
もちろん忘れて寝るときもある。
(終)
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